今回の公開パス大会を通じて、地方の病院でも職員の意識次第で全国に通用する活動が可能になることをお知らせできたとすれば幸いです。参加者の方々からは一様に当院のがんばり屋の事務員にお褒めの言葉をいただきました。どの病院でも看護師を中心に医師・薬剤師などの参加で委員会を進めているようですが、当院ではパス委員会8名のうち2名が総務課の職員です。彼らがパス台帳の管理、アウトカム評価への繋がりなどのデスクワークをしっかりと支えてくれていることが当院のパス発展の大きな要因でもあります。参加者の皆様もこの点が各病院のネックとなっているようで大いに興味を持たれ、引き抜き条件の提示までされるような和気藹々とした情報交換会に終わることができました。私どもも初めての経験で至らない点も多かったことと思いますが夜景に免じてお許しいただければと思います。次の機会には全国の会員の皆様も是非函館まで足を運んでいただければと思っております。




 私が所属している大阪大学医学部附属病院では、すでにPACS、オーダリングシステム、電子カルテ等の導入がなされていますが、来年度のシステム更新ではついにクリニカルパスを電子化する運びとなりました。勿論、当院でもパス委員会が開催され、クリニカルパス作成・運用は鋭意行われているのですが、「電子化」ということになると超えなくてはならないハードルが沢山あるうえに、私自身のクリニカルパスの知識も不十分で、どの様に対応するべきか悩んでいました。そんな折りに、クリニカルパスの電子化を行っている黒部市民病院のシステムを見せて頂けるとお聞きして、今回の見学会に参加させていただきました。



 見学会は7月16日に大雨が降る中で行われたのですが、会場になりました講堂には北は北海道、南は熊本と、ほとんど日本全国から40名近い参加者がおられ、クリニカルパスや電子カルテへの関心の高さに驚きました。また、高桜英輔病院長を始め大勢の病院のスタッフの方が講堂に待機・対応して下さり、電子カルテ・クリニカルパスに対する黒部市民病院全体の熱意を大変強く感じました。実際、竹田慎一先生の「医療情報システムの概要」をお聞きしたところ、1987年からオーダーエントリーシステムに着手されるなど、黒部市民病院には先進的な取り組みをされる土壌があり、現在のシステムも病院スタッフが時間をかけて成熟させていったものであることがわかり、皆様の熱意もそのような歴史あってのことと納得がいきました。
 
▲ 今田光一 医師

 続いて電子化クリニカルパスについて今田光一先生からお話があり、黒部市民病院では、既に1999年からオールインワンパスに取り組まれ、すでに紙ベースでの運用に十分実績があったとお聞きして、基礎的な取り組みの重要性を改めて認識しました。また、先生の御指導の中で、「黒部市民病院のクリニカルパスがそのまま利用出来ると考えない方がよい」というお話を頂きましたが、クリニカルパスの作成・運用という点では勿論のこと、電子化を推進するにあたっては、薬剤部、手術部、放射線部など関係部署の業務フローにも関わってくる問題と思っておりましたので、強く共感致しました。また、「結果」「介入」といったバリアンスのとらえ方、アウトカムにクリティカルインディケータを用いていくなど、関係者には必聴の内容で大変勉強になりました。
 講師をして頂きました佐藤直美看護師長からの看護システムについてのお話の中でも、電子カルテと看護システム、クリニカルパスの連携が上手く取られていることが分かり、黒部市民病院内の各部門の協力あってこそ良いシステムが出来ているのだと分かりました。
 実際に電子化されたクリニカルパスの操作を見せて頂いたところ、パスに対する新たな発想が随所に盛り込まれており、また、GUIや操作性にも細かな配慮がなされていることに感心しました。このような点は、仕様書などでは書きにくい部分で、病院の先生方が開発に相当関わらないと出来ない部分ですから、さぞご苦労があったことだろうと密かに感動しながら拝見いたしました。
 改めて振り返って見ますと、今回の見学会では、クリニカルパスの作成、電子化には病院全体として取り組み、各関係者の協力を得ながら進めていくという、基本姿勢の大切さを実感しました。私自身、クリニカルパスに関して、全く勉強不足であったのですが、この良き先例を見せて頂き、前途多難な電子化へ向けて大いに励みとなりました。
 引き続き行われた懇親会では、お酒も入って和やかなムードで、話題もクリニカルパスだけではなく、病院の経営・運営といった普段はお聞きすることの出来ないお話も豊富に出て、独立行政法人化後の運営に関する様々な御指導を賜ることが出来ました。
 このような貴重な機会を作って頂きました、黒部市民病院、クリニカルパス学会の関係諸氏には、改めて感謝の意を表したいと思います。本当にありがとうございました。



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