DRG/PPSがおこなわれていない日本の現状では、やみくもに在院期間の短縮は必ずしも経営上の要請や患者さんの社会的状況に合致していないと思われます。ただし、入院時にその目的を明確にし、チーム医療を効率化してケアの質的向上をはかる意味は大きいと思われます。研修全体を通して、頭の中では以前よりパスに関する理解は深まったように思いますが、実際面で具体的にそれぞれの医療施設がどのようにパスを作り、運営し、それによって在院期間短縮以外のどういう成果が得られたかがまだ実感としては得られませんでした。今後の米国研修では、臨床の場で、パスが実際にどのように運営されているかをみる場(つまり病院見学)をより多くし、出来ればそのあとで自分たちでdiscussionする場をもった方が良かったように感じました。
 最後に、貴重な研修の場を与えていただきましたKaren Zander女史をはじめとする米国の方々、山嵜副院長、阿部先生、小林さん、各病院のクリニカルパス推進者の方々に厚く御礼申し上げます。






 米国研修の一貫としてWinthrop病院を訪問させて頂きました。Winthrop病院は、ベッド数591床、年間患者数30,000人、年間分娩数5,000件、救急外来患者数40,000人であり、NYのロングアイランドにおけるヘルスケア提供機関として中核をなしています。特に心臓外科に力を注いでおり、心開胸においては1000件以上実施されています。今回は、心臓外科領域におけるパスへの取り組みの紹介を中心とし、また他科のパスの活用、記録、バリアンス追跡、集積システムについても見学を行うことができました。その一部を紹介させて頂きます。
 Winthrop病院において、パスは専門家集団からなる医療チームの臨床実践のガイドラインとして位置付けられています。
そして標準化された医療・ケア、アセスメント、患者教育、診断・治療・処置、日々のアウトカム、退院計画がパスの構成要素となっています。パスの主導入目的のひとつとして、文書(書類、記録類を含む)の合理化があげられていました。パス内にはケアの標準が明確に示されており、またパスと記録用紙が紙ベースで統合されていました。しかし科によっては、まだ記録と経時記録の両方が求められているところもあり、記録の効率化はこれからの引き続きの課題でもあるようでした。
現在パス以外にも専門家集団からなるチームがケアの標準化やDRGの実践ガイドラインとしてStanding Order Set(EBMを基本とし、各疾患、処置にあわせた最善と思われる一連の検査や治療が日別に記載された指示書)の開発をすすめていました。これは救急外来に患者が受診し、救命救急医が診断を確定すると、救急外来からそのStanding Order Setがスタートし、患者が入院する場合には、入院する病棟に継続的にStanding Order Setが流れるシステムになっています。各疾患、処置における平均在院日数やコストを定めたDRGというリストが存在する以上、その中での最大の効果を生むためのマネジメントが必要不可欠となっており、DRG対策にかなり重きがおかれているようでした。資源の有効活用、在院日数、コスト削減をはかりながら、質を保証するためには、パスだけでなくこのような他のツール(ガイドライン、プロトコール、患者教育マニュアルなども含む)も併用し、医療を実践していくことが重要となっています。
例えば、産科病棟における正常分娩のパスにおいては短い在院日数の中でいかに効果的に母親の自己管理、育児について教育を行うかということに焦点がおかれており、かなり詳細な教育指導マニュアルが整備されています。パスの内容も思春期の問題ある妊娠や分娩にも対応できるプログラムとアウトカムを挿入しており、対象者の個別性ある状況に臨機応変に対応できるようになっています。心臓外科領域では、人工呼吸器からの離脱、リハビリテーション、痛みへの対処などがプロトコール化されており、パスに挿入されたケアがこのようなプロトコールによって的確に判断され遂行されています。日本においても、パスと他のマニュアル、ツールを上手く併用できるようにしていくことで、より効果的にパスが運用されていくと思います。
またクリニカルインディケータ(臨床を評価する指標)を抽出し、バリアンスをコード化し、バリアンス追跡を効率よく行えるように整備を図っています。病棟にはバリアンスを集積する事務スタッフが配置され、バリアンスが発生した時点で、医療スタッフはバリアンスをその事務スタッフに報告し、そのバリアンスをバリアンスコードに応じて、その事務スタッフが入力するという方法を実施していました。

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