平成15年8月9日、札幌において第6回日本クリニカルパス学会教育セミナーが開催されました。「薬剤業務に必要なクリニカルパスと医療の標準化」をテーマに4人の先生方がそれぞれご講演された後、総合討論という内容でした。当院からは病棟薬剤師、新人薬剤師を中心としたメンバーで参加させて頂きました。当院でもクリニカルパスは稼動しており、私も日常の病棟業務の中で使用しておりますが、薬剤師として積極的に取り組むという所までは至っておらず、今回のセミナーはそれを考えるのに大変良い機会になりました。
 当院薬剤部本郷文教からの「当院におけるクリティカルパスへの取り組み」では、当院のパスの現状が紹介され、パスに掲載されている具体的薬品名が現在は少なく、エビデンスに基づいて使用薬剤を掲載していくべきであることや、院内のバリアンス分析の結果、発生原因として“薬剤師が対応できない”という項目が3番目に多いという問題を改めて認識しました。飛野幸子先生(済生会熊本病院)の「クリニカルパスと今後の薬剤師業務」では、パスの作成・運用・評価・改訂の各段階において薬剤師が深く関わっており、エビデンスに基づいた文献を示して薬剤の使用法を提案しているということを具体例とともにご紹介頂きました。また薬剤師も院内パス大会で積極的に発表し、ICT(感染管理チーム)やNST(栄養サポートチーム)にも所属しているそうで、薬剤師がチーム医療の一翼を担っていると感じました。井上忠夫先生(聖路加国際病院)の「薬剤師の新たな挑戦−クリニカルパスと薬剤経済学−」では、医薬品の適正使用を考える時に有効性・安全性だけではなく今後は経済性も考える必要があり、経済性を評価するためのツールとして薬剤経済学があるというお話で、薬剤経済学の考え方を生かして市中肺炎のパスを作成したという実例が提示されました。薬剤経済学で費用・効果分析を行うことはクリニカルパスに対してだけではなく、院内採用医薬品の品目数削減などにも非常に役立つのではないかと思いました。岡田晋吾先生(函館五稜郭病院)の「クリニカルパス導入による病院の進化」は医師の立場からのご講演で、パスはチーム医療には不可欠なものとなっているというお話の後、パスによる薬剤の標準化はリスクやコストの削減につながり、標準化のために必要なエビデンスの収集・分析において薬剤師が活躍することを期待するとのコメントがありました。今回のセミナーでは、クリニカルパスの実践において薬剤師がさまざまな役割を果たし得るということを学び、そのためにはEBMや薬剤経済学の考え方も取り入れる必要があると感じました。今回学んだことを今後の業務に少しずつでも生かしていきたいと思います。
 

 今回、9月26日27日の2日間にわたり行われました第2回前橋赤十字病院パス大会に参加することができましたので報告をさせて頂きます。
 当院は平成9年からパス大会を実施しております。しかし、他の病院のパス大会に参加する機会はほとんどなく、私自身は非常に楽しみにして前橋へ向かいました。参加者は21施設37名であり、北は青森から南は熊本(当院でありますが)まで、医師、看護師など全国から多くの方が参加されていました。
 1日目はまず、池谷俊郎副院長より「前橋赤十字病院のパス活動の歩み」と題して、クリニカルパスの活動とその成果についてご説明がありました。その中で、病院の目指す医療の一つにクリニカルパスが挙げられていることから、クリカルパスに対する熱意を感じることができました。



 続いて前田陽子看護師長より「パス運用による看護業務の変化」を拝聴いたしました。そこでは従来の看護記録にパスが加わり、煩雑になった記録を全面的に見直し、通常のパスに、パス適用指示書、バリアンスシート、日めくり式パス表などいくつかのシートを加えパッケージ化し、このパッケージを活用するためにスタッフへの教育も熱心に行っているとの説明があり、効率化と教育への取り組みは非常に参考になりました。
 クリニカルパス大会は、宮崎病院長からのご挨拶に続き、「乳癌における連携パス」と題して開催されました。“乳房温存術”パスに関する発表が、外科医師、麻酔科医師、手術室看護師、病棟看護師、外来看護師の方々から発表がありました。すべて充実した内容の発表であり、特に“全身麻酔における手術”パス、“乳癌術後地域医療連携”パスなど院内・院外を問わず連携を重視し、非常に工夫がされてありました。また患者用パスでは、患者さんの治療参加を導くアイデアとして、“私の目標”を設定している点は非常に斬新的な発想で、是非当院でも導入していきたいと思います。

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