学会概要
一般社団法人 日本クリニカルパス学会 理事長挨拶
日本クリニカルパス学会が設立して四半世紀が経過しました。その歩みは日本のクリニカルパスの歩みといっても過言ではないでしょう。米国でコスト削減のツールとして開発されたクリニカルパスが、日本では医療の質を向上させるツールとして拡がり始めた時期が日本クリニカルパス学会設立時期と重なります。ちょうどこの頃にEBM(Evidence-Based Medicine)が盛んに取り入れられるようになりました。当初は急性期病院の中だけで使用されていたクリニカルパスが、地域包括ケアシステムの一環として地域完結型医療の提供ツールとして地域連携クリニカルパスが使用されるようになり、さらにがん地域連携の普及のためにがん地域連携クリニカルパスが一気に広まりました。この流れはがん領域にとどまらず、糖尿病や慢性腎不全といった生活習慣病にも拡大されてきています。診療報酬の面からは、DPC/PDPS(Diagnosis Procedure Combination/Per-Diem Payment System)対象病院にとって、クリニカルパスは必須のツールとなっています。近年では、働き方改革への対応としてタスクシフト/タスクシェアが求められ、そのためのツールとしても脚光を浴びています。また、電子カルテの普及を受け、クリニカルパスも紙ベースから電子ベースへと発展し、情報処理能力が一気に高まりました。
クリニカルパスは全職種が関わるツールであり、学会員は幅広い職種で構成されています。医師・看護師ばかりでなく、薬剤師、管理栄養士、リハビリテーションスタッフ、診療情報管理士、医師事務作業補助者、医療事務員やシステムエンジニアといった病院で働く幅広い職種、さらには電子カルテシステム会社のエンジニアなども会員登録しています。年1回の学術集会では職種を超えた熱い議論が交わされます。
日本クリニカルパス学会では数々の特徴ある活動を行っています。設立当初からの活動として、メーリングリストと法人会員制度があります。メーリングリストは学会員であれば誰でも投稿でき、共感する意見や先駆者からのアドバイスが瞬時に得られます。そして、学会員の登録は個人だけでなく法人でも可能です。法人会員となれば、その法人に所属する職員は、学会発表や論文投稿、メーリングリストへの投稿や閲覧も可能です。2013年からは資格認定制度を開始しました。人材育成が目的で「パス認定士」「パス指導者」「パス上級指導者」の3段階で認定します。そして、人材育成を支える教育としては書籍の発刊、教育セミナーや指導者養成コースの開催、教育動画の配信等を行うだけでなく、評価ツールとしても利用できるクリニカルパスラダーも開発しました。他学会との交流も盛んで、日本医療情報学会や医療の質・安全学会とは合同委員会を設置したり、お互いの学術集会で共同企画を組んだりしています。また、近年は電子クリニカルパスの標準化に力を注いでいます。標準アウトカムマスター(Basic Outcome Master:BOM)の開発やePathプロジェクト(クリニカルパス標準データモデルの開発および利活用)は、今後さらに発展していく分野と捉えています。
2024年10月に山中英治前理事長から理事長を引き継ぎました。これまでの4名の理事長が残した業績は眼を見張るものがあり、私で務まるのか不安がいっぱいです。しかし、私を支えてくれる多くの仲間がいます。力を合わせて頑張っていくつもりです。クリニカルパスというツールを通して医療の標準化を推し進め、医療の質の向上に貢献したいと思います。
定義
当学会の公式定義として定めました。
- クリニカルパス(略名:パス)の定義
- 患者状態と診療行為の目標、および評価・記録を含む標準診療計画であり、標準からの偏位を分析することで医療の質を改善する手法
- 電子クリニカルパス(略名:電子パス)の定義
- 情報通信技術(ICT)を用いて標準診療計画を作成し、標準診療計画に基づく診療の実施を支援し、患者個別の診療状況とその評価を記録し、逸脱事例の集計と分析などを処理する医療管理手法
- 電子クリニカルパスシステム(略名:電子パスシステム)の定義
- 電子クリニカルパスを実現するための情報システム
設立の趣旨
世界的に医療の標準化の重要性が見直されている今日、患者ケアの質的向上と効率化という、ある面で相反する目標を追求する効果的な医療手段としてクリニカルパスへの関心が高まっています 。
クリニカルパスを効果的に運用するためには、医師、看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、臨床検査技師、作業療法士、放射線技師、介護福祉士、病院管理者、医療事務担当者、行政側および患者など全ての医療に関わる人々が、チームとして一体となった医療がもっとも必要とされます。さらに様々な医療を支援する企業との連携も不可欠となるでしょう。
本学会は、特にチーム医療によるクリニカルパス手法の更なる普及を目指し、患者中心の医療・ケアにより貢献したいという願いから設立されました。
事業目的
臨床現場における具体的なクリニカルパスの導入・運用および改善を支援することを目的とします。
事業内容
- (1)会員の学術集会、研究発表会講演会などの企画・運営
- (2)クリニカルパス運用についての助言・相談の提供(ホームページなどを含む)
- (3)クリニカルパスに関する研究、調査及び教育
- (4)内外の関係学術団体との連絡、提携及び調整
- (5)学会誌、ニュースレター等の発行
- (6)クリニカルパス領域における各種標準化に関すること
- (7)その他本会の目的達成のために必要な事業
著作物
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