平成16年2月14日から2月20日までの7日間、第4回海外研修会に参加しました。ニューサウスウエルズ(以下「NSW」)大学はじめ、シドニー子供病院や工科大学看護学科等で、医療の質を確保するための手段と、改善のためのシステムのあり方、オーストラリアにおける看護師の状況について説明を受けました。
 オーストラリアの医療システムは、医療制度の管理部門を中心に@テクノロジーA人口統計B法C財政D労働力(教育)のサブシステムを持つモデルを使用しています。管理部門では「リーダーシップ・意思決定」が求められ、サブシステムが外部環境に、如何に対応しているかを監視しています。
 NSW保健省の「クリニカルパス・クリニカルガイドライン」のアウトカムは、@安全性の改善A効果(安全であっても効果がないことがある)B適切性(患者にとってメリットがある)C患者参加Dアクセス、平等性(医療サービスにアクセスできるのは誰かという基準を設ける)E効率性でした。
 この6点は、米国医療質委員会の「21世紀の医療システムが達成すべき目標」とした報告と、共通のものです。当院看護部の目標も、「看護の質を高めるための業務改善と推進」の視点として、同じくこの6点を設定しています。研修に参加し、「安全で質の高い医療」に取り組むことの共通性を改めて感じると共に、私達看護師が看護部の目標に基づいて、具体的行動を起こすことの重要性を痛感しました。
 また、当院でもクリニカルパス委員会があり、実際に熱心に学習し実践している人達はいますが、勤務をしている消化器外科・心臓血管外科の混合病棟では、他院から紹介されたハイリスク患者を対象にしていることを口実に「バリアンスが多すぎるため出来ない」と、クリニカルパスを殆ど使用していませんでした。しかし、バリアンスリストの作成・訂正、バリアンスの分類を行なうことや定期的な分析を行なうことで、医療者間に有益な情報が提供され、バリアンスが削減することを確信しました。

   NSWでは2年前に州政府が、航空業界で活用されていた安全改善プログラム(有害事象の根本原因分析を行い、システム全体を見直して改善して行くプログラム)を2002年5月に導入、大学と共同で安全に関する質保障を目的にICE(Institute for Clinical Excellence)を設立し、問題を掘り下げ、有害事象の再発防止策を検討、分析結果を全組織で共有し、改善策の導入レベルを確認しています。「安全は文化である。規則ではない」と提言し、重要度コード(コード1:最も重大、州に報告する。コード2:州の担当部門の幹部に報告。コード3以上:定期的に報告)を確立しました。クリニカルパスやガイドラインを定着させることで、リスク減少にも繋がり、インシデントが発生してもチームとしての対応が早期に出来ると感じました。




 平成16年3月13日福岡において「クリニカルパスと薬剤管理指導業務」という内容で教育セミナーが開催されました。
 当時精神科単科の病院に勤務しておりましたが、4月より一般病床のある当院に勤務することが決まっておりました。これまでよりパスが身近になる環境になると思い参加いたしました。
 済生会熊本病院の副島秀久先生からは、クリニカルパスについて初めての方もいらっしゃるのでという言葉を添えてバリアンスなどの用語の解説を加えながら済生会熊本病院でのパスの作成、活用状況からTQMまでお話いただきました。九州という土地柄から済生会熊本病院の飛野先生のお話を聞く機会がこれまでありましたが、改めてパスは作成して終わりではなく、活用進化させて行くものであり、組織横断的に進めて行くものだいうことを認識いたしました。聖路加国際病院の井上先生からは、近頃雑誌等でも少し目にするようになってきた薬剤経済学についてのお話を聞かせていただきました。医薬品の採用や薬物療法において薬剤師は、医療経済や薬剤経済を考えて情報を整理し、チーム医療の中で意見を述べて行く必要があると感じました。国際親善総合病院の依田啓司先生からは、抗がん剤の使用を事前登録制にされていることや各種薬剤でのチェックシートをご紹介いただきました。薬剤管理指導業務において、担当する薬剤師によって提供する内容にばらつきがあってはいけないと感じチェックシートの作成を考えているところでしたのでとても参考になりました。クリニカルパスも含めてチーム医療に薬剤師が参画するには、薬の専門家としての知識が必要であることを再認識いたしました。また、服薬指導に偏りがちな薬剤管理指導業務に疑問を感じておりましたが、やはり医薬品の適正使用を目標に薬剤管理指導業務を進めて行く必要があると感じました。

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