1月29日に東京医科歯科大学において、「EBMとパス─パスにEBMを取りこむ」というタイトルで東京医科歯科大学の金子善博先生に講演をお願いしました。クリニカルパスの発展にともない、医療ケアに対する根拠がますます求められています。しかし、どのように根拠を探し適用するかは漠然としている現状があります。そのために根拠、エビデンスに基づく医療(EBM)手法を学び、実際にクリニカルパスに取り込む必要があります。
 今回は、EBMの全体像、EBMとクリニカルパスの関係、EBMの手法を用いたエビデンスの検索や理解の仕方についての解説がありました。また、実際にコクランライブラリーの検索デモンストレーションが行われ、自分で「やってみよう」という動機づけにもなりました。コクランライブラリーは、ヘルスケアに関する有効性を比較臨床試験に焦点をあて、評価結果を伝えることを目的としたコクラン共同計画の作成するデータベースです。
 実際、多数の原著論文を検索し評価することは多くの困難を伴います。そこで近年発達した、第三者によって評価された情報の活用が必要となります。例えば、先のコクランライブラリーや二次情報誌であるEvidence-based Nursing誌、系統的に作成されたガイドラインなどの利用があげられます。検索に先立っては、「検索する問題を定式化すること」を重視することが必要です。また、「ないものはエビデンスがない」と割りきることも肝心です。
 臨床現場において、何故という疑問にぶつかった時、積極的に原因追及できるような「根拠」となるデータを大いに活用し、クリティカルな視点で問題解決を行なっていくことが求められます。「適正な医療」をはかるために、クリニカルパスに挿入された治療、薬剤、医療ケアが、確実な根拠に支持され、標準化が図られていくことが期待されます。


 去る2月7日〜10日にNYにあるNorth Shore-Long Island Jewish Health Systemにおいて、多職種の参加者からなるクリニカルパスの研修会が行われました。そして、医療経営、医療ケアの質の測定、質保証・向上の視点から、クリニカルパスについて勉強する機会を得ました。そこでは、進化した第三世代のクリニカルパスが用いられており、医療ケアの質をマネジメントするツールとして大きな力を発揮していました。
 今回は、米国における具体的なクリニカルパスの作成方法に関しては、あまり触れられなかったということもあり、その点では消化不良であったかもしれません。しかし、「クリニカルパスのバリアンス分析からの質の効果測定、質改善」については、体系的にシステムが整備されており、大変興味深ものとなりました。
カレン・サンダー博士
 日本でもクリニカルパスという名前は定着しつつありますが、システム改革としての第三世代のクリニカルパスへの進化は、これからの課題です。日本と米国では、医療保険制度や文化的背景も異なるため、日本独自の「クリニカルパス」を改革していく必要もあります。しかし、厚生省でも、「質の高い医療の効率的な提供」を打ち出しており、今回の研修は、医療ケアの「質」をコントロールしていく上での指針になったのではないかと思います。
 米国のクリニカルパスの実際を学べたことは収穫でしたが、それと同時に参加された方々と交流を深められたこともまた大きな収穫でした。情報交換を通して刺激を受け、様々な視点から米国と日本を比較することもできました。

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