コンピュータ上から患者の詳細な情報や経過、バリアンスの発生状況が見れるようになっており、最終的なアウトカム評価のデータとしてだけでなく、バリアンスが発生した時点での対応方法の検討のためのデータとしても活用できるようになっています。さらに次なるステップとしてより意義のあるデータを収集するためにバリアンス追跡システムの改定を考えているようです。 バリアンスは、質を改善するための重要な指標となります。例えば、心臓外科チームでは、バリアンスデータを活用し、ベンチマーク(自己の施設間や他の施設間で医療の提供方法、アウトカムを比較する)を行っています。例えば、現在の医療実践をより効果的なものとするため、過去の治療成績や文献レビューなどを通して、Best Practice(最善の医療実践)を検討し、チームの中にその方法の実践を取り込み、それに関係するデータおよびバリアンスデータを収集し、アウトカムを評価し、医療実践の改定や再評価を行っています。これらの成果は、Standing Order Setやパスの改定だけでなく、プロトコール、患者教育プログラムなどにもよく反映されています。バリアンス集積、分析が、これから日本でも積極的に行われていくようになることが望まれます。 Winthrop病院ではチーム医療に力をいれており、最善の医療を提供するための多職種からなる心臓外科チームを形成し、さらには質をマネジメントするCollaborative Care Team(協働ケアチーム)も形成されています。また各職種の機能が十分に発揮できるように役割や分担が明確にされています。近年、米国においてチーム医療による医療の推進が効果的なアウトカムを生むということが報告されるようになってきており、Winthrop病院でも患者満足度の向上、死亡率の低下などにつながっているようです。多職種からなる協働ケア実践から医療の質を保証することの重要性が改めて示唆されます。 今回の訪問を通して、パスを運用するための戦略について改めて振り返る機会となりました。Winthrop病院においては、医師が上手くイニシアティブをとり多職種をまとめあげていること、在院日数短縮、コスト削減を目標として掲げている一方で質により重点をおき効果的なマネジメントを行っていることなどがパスの成功要因であると思われます。米国の厳しい医療制度の中で、病院はどのようにマネジメントを実施しているのかといったことを実際に見学できたことは大変有意義でした。今後の日本の医療の質保証に役立てて行きたいと思います。 |
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||